鼻炎・副鼻腔炎の手術なら、鼻・副鼻腔クリニック大宮

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当院の手術について

Medical

全身麻酔について

当院の手術は基本的に全身麻酔で行っています。全身麻酔手術のメリットは、手術中の苦痛が無いことです。
そのことにより、手術をより正確に、安全に行うことができます。
局所麻酔下の手術ですと、患者さんの痛みの程度やコンディションなどによっては、手術が完遂できない場合もありますが、全身麻酔であればそのようなことはありません。
また、当院の麻酔は麻酔科専門医の先生による麻酔ですので、安心してお受けいただけます。

全身麻酔手術の適応について

全身麻酔を安全に行うために、いくつかの基準がございます。当院は耳鼻科単科の病院ですので、麻酔可能な基準はやや厳しめに設定してございますが、ご了承ください。

以下に当てはまる患者様には、全身麻酔手術は提供しておりません。

  • 10歳以下のお子様および70歳以上のご高齢の方。
  • 心血管系にご病気をお持ちの方
    (例)心筋梗塞、心臓弁膜症、大動脈瘤、コントロールされていない高血圧など
    高血圧に関しましては、お薬でしっかりとコントロールされていれば問題ありません。
  • 重篤な呼吸器疾患をお持ちの方
    (例)肺気腫、肺炎、コントロール不良の気管支喘息など
    喘息は、治療されていて、発作が無いようでしたら問題ありません。
  • 中枢神経系に疾患をお持ちの方
    脳梗塞、脳出血、脳動脈瘤、脳腫瘍など、中枢神経系にご病気をお持ちの方は、当院での手術はお勧めしておりません。
  • 透析中の方
    当院は透析設備がございませんので、申し訳ありませんが、お断りさせていただいております。
  • コントロール不良の糖尿病をお持ちの方
    具体的には、HbA1cが6.5以上の方やインスリン注射での血糖コントロールをされている方は当院での手術はお勧めしておりません。
  • 妊娠中の方
  • 肥満の方(BMI値30以上)
    全身麻酔の際、挿管困難や換気困難が予想される場合は、当院での手術をお断りさせていただきます。手術可能な場合でも、できる限り減量していただくようお願いしております。
  • 遠方にお住まいの患者様
    手術はリスクゼロではありません。特に術後の出血は、緊急で対応する必要があります。そのため、当院へ車で2時間以内にご来院いただけない方の手術治療は、原則お断りしております。遠方にお住まいでも、術後2週間当院近隣に滞在していただける方は、手術治療も相談させていただきます。ご了承のほど宜しくお願い致します。

上記に当てはまらない患者様でも、医師が、総合病院や大学病院など、高次医療施設での手術加療が望ましいと判断した場合は、そちらをご紹介させていただきますので、何卒ご了承ください。

手術当日の流れ

1受付
受付をしていただきます。当日は9時頃お越しください。受付
2ご案内
oomiya roomsに宿泊される方は、お部屋にご案内します。日帰りの方はリカバリーにご案内します。ご案内
3問診・点滴
手術前にリカバリーで術前の問診や、点滴の留置を行います。問診・点滴
4手術
手術を行います。開始時刻は1件目の方は9時30分、2件目の方は10時30分から11時ころの開始となります。手術
5術後
術後はリカバリーで数時間様子観察を行い、麻酔科医の判断で問題なければ、宿泊施設に移動、もしくはご帰宅となります。術後

日帰り手術について

日帰り手術を受けていただくための条件について

日帰り手術(ご自宅に帰宅される場合)を受けていただくには、下記に示す幾つかの条件がございます。

・お住まいの場所が、当院からお車で1時間圏内であること。
・手術当日、一晩付き添える方がいらっしゃること。
・持病が無いこと。

上記の条件を満たされている場合でも、手術内容によっては、医師が近隣の宿泊施設に1泊することをお勧めすることがございますので、ご了承ください。

宿泊施設について

当クリニックには宿泊施設「oomiya rooms」が隣接しておりますが、
宿泊場所の選択は患者様の自由です。
ただし宿泊場所の選定には以下の点をご考慮ください。

・宿泊施設は、クリニックから30分圏内の施設をお選びください。
・oomiya rooms以外の宿泊施設にご宿泊の際は、必ず一緒にご宿泊いただける方が必要です。
・手術当日と翌日の2日間は、クリニックと宿泊先の移動の際はタクシーをご利用ください。自家用車の場合は、患者様ご本人の運転はご遠慮ください。
・手術当日は、チェックイン後の外出はお控えください。

oomiya roomsについて

oomiya roomsは、当院に隣接した宿泊施設です。
こちらをご利用いただくメリットして、付き添いが不要(お子様、ご高齢の方を除く)、
チェックイン後に、診察や処置が必要になった場合でも、移動の負担が軽いことなどがあります。

1泊(素泊まり) 6,600円(税込)

※oomiya roomsご利用の際の注意点
oomiya roomsは、通常の宿泊施設であり、クリニックの入院ベッドではありません。
そのため、oomiya roomsご利用の際も、入院扱いとはなりませんので、ご了承ください。
24時間看護ではありません。

病院ではありませんので、宿泊部屋での医療行為(診察、各種処置、点滴など)は行っておりません。
医療行為が必要な場合は、クリニックに移動していただき行います。
他の宿泊施設と同様に、チェックイン後は外出禁止となります。
素泊まりのみになりますので、お夕食、ご朝食はご自身で準備をお願いしております。
軽食やお菓子などの有料販売がございます。
無料のミネラルウォーターはお部屋にご用意しております。

手術料金について

当院で行う治療や手術は、厚生労働省保険診療の対象となり3割負担の金額となります。
以下に当院で行う代表的な処置、手術の3割負担での金額を示します。
※診療報酬改定に伴い、金額が多少変わることがございますので、ご了承ください。

鼻の手術はこれらを組み合わせて行います。
例えば鼻中隔の手術と両側の下鼻甲介の手術を合わせますと、自己負担分は¥67,500となります。
良くある手術の組み合わせをまとめてみましたので、ご参考にしてください。

下甲介粘膜焼灼術 主に花粉症に対し外来で行う処置です。 ¥3,240(片側)
¥6,480(両側)
内視鏡下鼻中隔手術Ⅰ型
(骨、軟骨手術)
鼻中隔の曲がりを矯正する手術です。 ¥19,860
内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型
(下鼻甲介手術)
下鼻甲介の骨を除去し、下鼻甲介のボリュームを減らす手術です。 ¥23,820(片側)
¥47,640(両側)
経鼻腔的翼突管神経切除術 後鼻神経切断術のことです。神経を切断し、鼻汁、くしゃみを減らします。 ¥91,380(片側)
¥182,760(両側)
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅱ型
(副鼻腔単洞手術)
4つの副鼻腔のうち1つを開放する副鼻腔の手術です。 ¥36,000(方側)
¥72,000(両側)
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅲ型
(選択的副鼻腔手術)
4つの副鼻腔のうち2~3つを開放する副鼻腔の手術です。 ¥74,730(方側)
¥149,460(両側)
内視鏡下鼻・副鼻腔手術Ⅳ型
(汎副鼻腔手術)
4つの副鼻腔全てを開放する手術です。 ¥96,240(方側)
¥192,480(両側)

※多くの鼻科手術は高額療養費の対象となります。1ヵ月に支払った医療費の窓口負担額が一定額を超えた場合には「高額療養費制度」が適用され、超えた負担額を高額療養費として加入している医療保険から支給されます。
詳しくは厚生労働省の資料をご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

手術説明書

以下は、当院で手術をお受けいただく方にお渡ししている文書です。当院での手術治療をお考えの患者様にもご一読いただきたく掲載いたしました。

① 当院の手術の目的
当院の手術目的は、鼻腔形態を是正し、鼻詰まりから生ずる様々な症状を改善することです。鼻が詰まることで、集中力、睡眠の質、運動能力などが低下します。また、口呼吸になると、吸った空気が鼻というフィルターを通らなくなります。結果として、感染症に罹患しやすくなったり、口が乾いて口臭が生じたりと、良いことはありません。また、鼻汁が多い方は、鼻汁を減らす手術もあります。常に鼻をかんで、ティッシュが手放せない状態は、考えただけでもストレスです。鼻汁が鼻の奥に溜まることで、鼻閉にもなります。鼻詰まりの原因は鼻炎だけでなく、副鼻腔炎から生ずる鼻茸、腫瘍などもあります。これらの原因を手術によって取り除くことにより、生活の質がぐっと上がります。

② 具体的な手術の方法
基本的に全身麻酔で行います。麻酔がかかっている間は、意識がありませんので、痛みを感じることはありません。手術中の記憶もありません。知らない間に眠り、目が覚めたら、手術が終わっています。麻酔は麻酔専門の先生がかけますので、ご心配はいりません。手術時間も1時間前後と短く、術後30分で飲水可能、トイレへの自力歩行も可能となります(個人差は多少あります)。皆さんが嫌がる尿道への管の挿入もありません。
手術では内視鏡という細いカメラを鼻に入れ、画面を見ながら手術をします。カメラも手術器具も鼻の穴から挿入しますので、顔の表面に傷は付きません(鼻の穴の周囲が赤くなったりすることはありますが、一時的です)。
当院では、どの手術後もガーゼやスポンジなどの詰め物はいたしません。副鼻腔の術後のみ吸収性の止血剤を副鼻腔に留置しますが、2~3週間で自然吸収されるため、抜去処置の必要はありません。

③ 術後の状態について
手術が終わった直後は、あまり痛みを感じない方が多いです。術後数時間経つと痛みが出てくる方がいらっしゃいます。そのときは飲み薬か座薬の鎮痛剤を使用していただきます。鎮痛剤を使用すれば、痛みはほとんど無くなる方が多いです。鼻を氷などで冷やしたりするのも効果的です。一晩がんばれば、翌朝には大分楽になる方が多いです。鼻は手術直後には通っていますが、しばらくすると詰まってしまいます。これは、創部から浸み出た血液や分泌物が鼻腔に溜まること、鼻の粘膜が腫れることが原因です。手術当日は鼻がかめませんので、詰まりは我慢していただくしかありません。翌日から鼻洗浄を始めていただきますので、詰まりは多少楽になります。鼻詰まりは徐々に軽くなりますが、通るようになるまでは1~2週間必要です。手術直後には、血液混じりの分泌物が垂れて来ますので、鼻に綿球を入れます。汚れたら、適宜ご自身で交換していただきます。のどの方に血液が大量に回ったり、綿球がものの数秒で真っ赤になるなどあれば、出血している可能性があります。すぐに医師なり看護師なりに教えてください。極まれにですが、手術してから2~3週間後に出血することがあります。可能性は0.2%ほどです。万一そのようなことがあれば、すぐに当院にお知らせください。鼻血は必ず止血できますので、焦らずにご対応ください(対応方法、連絡先につきましては、別紙を参照ください)。
術後出血を予防するために、激しい運動(例えばランニングや筋力トレーニングなどのいきむ行為はダメです。自転車を漕ぐくらいは大丈夫です。便秘の方はご注意ください。)と飲酒は禁止させていただいております。また、術後2週間は強く鼻をかむことも止めてください。

④ 術後の通院について
術後は手術から1週間後、1ヶ月後、2~3ヶ月後に再診していただきます。術後2、3ヶ月後にCTを撮らせていただき、問題なければ通院は終了になります。難病である好酸球性副鼻腔炎(こうさんきゅうせいふくびくえん)の方は、術後も1~2ヶ月に1回の通院が必要になる方が多いです。術後の快適な状態を保つための生活指導や、適宜内服薬や点鼻薬を使用していきます。難病指定もされている副鼻腔炎であり、確固たる治療がありませんが、手術治療を始め、内服治療、生活習慣の改善などを併用していくことで、良い状態を保つことが可能です。

⑤ 手術の合併症について
手術はリスクのある治療です。残念ながら、合併症ゼロの手術法は存在しません。鼻に限らず、あらゆる手術で合併症のお話をしなくてはなりません。リスクのある治療だからこそ、ご自分の信頼できる医療機関で手術を受けてください。心に不安や、納得できない気持ちがあるまま手術を受けてはいけません。手術を受けることを決めた後でも、そのようなお気持ちがあるようであれば、遠慮無くおっしゃってください。いつでも中止なり延期なりできます(できれば予定2週間前までにおっしゃっていただけますと嬉しいです)。
さて、合併症ですが、最多なのは術後の鼻血です。最多といっても、0.5%ほどです。ただゼロではありません。万一出血した場合は、緊急電話に連絡をいただき、処置が必要と判断した場合は、受診していただき止血処置を行います。
この後は、かなりまれな合併症ばかりなので、あまり気にされなくて良いかと思いますが、お話しておきます。少し長いですが、お付き合いください。
鼻中隔手術の話
まず鼻中隔の手術に特徴的な合併症として、鼻の外見の変化があります。具体的に説明しますと、鼻中隔は鼻の真ん中にある軟骨と骨でできた、左右を分ける仕切り板です。ここがどちらかに極端に曲がっていると、凸側の鼻が詰まりやすくなってしまいます。曲がった軟骨もしくは骨を切除することで、詰まりを改善する手術です。鼻中隔の構造全てを除去するわけではなく、曲がっている部分のみを取ります。ただ、中には広範囲で曲がっていたり、鼻を支えている前方部分がひどく曲がっている患者様がいらっしゃいます。この場合、切除する範囲や場所により、多少(数㎜単位です)鼻の高さや鼻先の角度が変化することがあります。鼻の外見が変化する可能性があるかたには、手術前にお知らせしますので、嫌であれば、鼻中隔の手術はしないほうが良いと思います。しかし、実際は鼻中隔の手術後に鼻の外面上の変化を気にされる方はほぼいらっしゃいません。あえて可能性を表すなら、0.02%くらいでしょう。
もう一つ、鼻中隔穿孔(びちゅうかくせんこう)という合併症があります。これは、仕切り板である鼻中隔に穴が開くというものです。軟骨、骨を取り除いた部分は粘膜のみになります。イメージが湧かない方は、柔らかい布で挟んだ鉄板を思い浮かべてください。鉄板が入っているときはガチガチに堅いですよね。そこから一部分鉄板を取り除きますと、布だけの部分はフニャフニャになることが想像できるかと思います。ここまで極端ではありませんが、原理は同じです。そのフニャフニャの部分は弱いですから、自然と破けて穴を形成するのが、鼻中隔穿孔です。穴は鼻の中ですから、外見上の変化はありませんし、他人様から見えることもありません。通常症状も無いため、ご本人も医師に指摘されるまで気づかないかもしれません。まれに、穴の周囲にかさぶたが付きやすくなり、鼻をかむと血が混じるようになったり、息を思い切り吸い込んだ際にピューと音が鳴ったりします。この合併症の頻度は約0.5%です。
下鼻甲介手術の話
もう一つの鼻詰まりを改善する手術の代表が、下鼻甲介を切除する手術です。鼻の中には3つのヒダがあり(壁から出ているコの字型の棚のような物を想像して下さい)、上から上鼻甲介(じょうびこうかい)、中鼻甲介(ちゅうびこうかい)、下鼻甲介(かびこうかい)と呼んでいます。下鼻甲介は中でも一番大きい構造で、鼻が詰まる時は、これが肥大していることが多いです。まれに中鼻甲介が大きい場合もあります。この時は、中鼻甲介も小さくします。
この手術は施設によって方法が様々です。最もバリエーションの多い手術だと思います。下鼻甲介粘膜を小さくする方法にはレーザーや電気で粘膜表面を焼き、収縮させる方法、粘膜自体を切除する方法(切除する方法にもハサミで切ったり、シェーバーと呼ばれる特殊な器械で吸引しながら切除したり、色々あります)、下鼻甲介の骨を除去する方法(粘膜は全部残ります)があります。当院では骨を除去する方法を用います。下鼻甲介の粘膜には、鼻を温めたり、加湿したり、汚れを除去したりと大事な機能がありますので、粘膜は全部保存したほうが良いと考えています。また今まで様々な方法を行ってきた経験上、骨を除去する方法が最も効果が高いと確信しております。正直なところ、骨を除去する方法は、他の手技に比べて、手間がかかります。しかし術後の経過が良く、効果の高い方法ですので、当院ではあえてこちらを用いています。骨切除には大きな合併症がありません。出血がごくごくまれにあるくらいです。
昔は粘膜を丸ごと切除する方法がありました(もしかしたら、今もこの方法をされている先生がいらっしゃるかもしれませんが)。この方法で手術をされますと、先ほどお話しした鼻の加温加湿、自浄作用などが失われ、半永久的に悪臭のするかさぶたが付くようになったり、ひどい鼻詰まりに悩まされるようになったりします(なんで粘膜を取ったのに、鼻詰まりになるの?と思われるかもしれませんが、鼻はある程度狭い方が良いのです。口をすぼめて空気を吸ってみてください。空気が勢いよく入ってきましたよね。次に大きく口を開けて吸ってください。どうでしょうか?口をすぼめて吸ったときより、明らかに勢いがないですよね。鼻腔も広すぎると、口を大きく開けて吸い込んだときと同じになります)。こういったことからも、粘膜保存がいかに大事か分かっていただけたかと思います。
★下甲介粘膜焼灼術について
下甲介粘膜の肥大がメインの場合は、粘膜を収縮させるこちらの方法を選択することもあります。主に後鼻神経切断術と併用することで、鼻閉改善に効果があります。
後鼻神経切断術の話
次に後鼻神経切断術の合併症です。後鼻神経切断術は鼻の最奥で神経を切断する難易度の高い手術です。最近では行う施設も増えて来ましたが、その方法は施設によって大分違います。オリジナルの方法は、神経の元の方で切断しますが、後鼻神経が蝶口蓋動脈という太い血管と併走しているため、神経のみ切断するのは難易度が高いのです。そのため、施設によっては神経と血管を同時に切断したり、奥ではなく近いところで神経を切断する施設もあります(神経は元から末梢へ分岐して行きますから、枝を切るより、元で切ったほうが理論上は効果が高いことになります。大木の幹を切るのと、上の方で小枝を切るのでは、効果が及ぶ範囲が違うことが何となく想像できますでしょうか)。当院では、神経の元のところで、動脈は傷つけず神経を切断するオリジナルの方法で手術を行っています。血管を傷つけないため、術後の出血の可能性をかなり減らすことができます。動脈を切ってしまうと、術後2週目くらいに大量の鼻出血をみることがあります。また動脈は、鼻腔を栄養している血管ですので、切断してしまうと、一部の粘膜がだめになったり、粘膜の機能低下を来したりする可能性があります。当院の方法で手術をした場合、後鼻神経切断術の合併症(術後の鼻出血)を起こす確率は、限りなくゼロに近いと言えます。
副鼻腔手術の話
最後は副鼻腔炎の手術の説明です。副鼻腔炎の手術というと、一昔前は歯茎を切開して、口から鼻にアプローチする方法が主でした。今でも患者様の中には、この方法で手術をすると思われている方がいらっしゃいます。現在は副鼻腔の手術も、内視鏡で行います。
そもそも副鼻腔と言われても、ピンと来ないかと思います。副鼻腔は顔面の骨の下にある空洞のことです。なぜ空洞になっているのかは諸説あります。顔に受ける衝撃を分散するためとか、声の共鳴に役立っているとか言われていますが、はっきりしたことはわかっていません。この空洞に炎症を起こした状態が副鼻腔炎です。炎症には細菌感染など原因がはっきりしているもの、前述した難治性副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎)のような原因が明確でないものがあります。簡単に言うと、膿が溜まるのが主体であれば細菌感染、鼻茸(鼻ポリープ)と呼ばれる粘膜が腫れた状態(ポリープと呼びますが、腫瘍ではありません)が主体になるものが、好酸球性副鼻腔炎であると考えていただいて良いかと思います。どちらも程度の差こそあれ、鼻水、鼻詰まり、嗅覚の低下などが主症状です。細菌感染による副鼻腔炎では、悪臭のする鼻水、微熱、顔の痛みや腫れを起こすことがあります。好酸球性副鼻腔炎は、透明でねばねばした鼻水、強い鼻つまり、嗅覚障害が主症状になります。いずれにしろCTスキャンや内視鏡所見で診断していきます。
さて、手術の合併症の話でした。副鼻腔はどこに位置するかと言いますと、おでこ、目と目の間、頬、鼻の最奥部に存在しています。それぞれ前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞(しこつどう)、上顎洞(じょうがくどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)と呼ばれます。当院のホームページに図があるので、ご参照ください。顔の真ん中に鼻があり、その周囲に目や頭蓋底(鼻から脳につながる部分。骨で仕切られています)があります。すなわち手術操作を誤ると、目や脳に危害が加わる恐れがあるのが副鼻腔の手術です。目や脳を損傷してしまうと、視力障害(失明のおそれも)、眼球の運動障害(目がある方向に動かなくなる)、髄膜炎、脳炎などの恐ろしい合併症が起きる可能性があります。こう聞くと、とても危険な手術という印象をお受けになるでしょう。しかし、これらの合併症が起きる可能性は極めてまれです(施設によって違うと思いますが)。熟練した術者がこれらの合併症を起こす可能性はゼロと言って良いかと思います。もちろん当院ではゼロです、と言い切っておきます。副鼻腔の手術は内視鏡での鼻手術では、最も重篤な合併症を持つ手術です。それだけに、手術をお受けになる際は、慎重に病院や担当医をお選びいただきたいと思います。

最後に
手術を受ける前に知っておいていただきたい内容を、なるべく網羅して書いたつもりですが、説明不足の部分もあるかもしれません。疑問点などございましたら、診察室で遠慮無くおたずねください。手術はリスクのある治療法ですが(手術以外の治療にも多かれ少なかれリスクはあります)、1時間から1時間半の処置により、劇的に人生が変わる方もいらっしゃいます。もちろん、期待していたほどでは無かった、とおっしゃる方もおられます。手術を受ける前に、良くお考えになって手術を受けていただきたい、との思いから、この説明書を作成いたしました。
手術治療には適応があり、年齢や持病などの理由で手術を受けられない方には、大変申し訳なく思いますが、治療によりお体を壊されては何の意味もありませんので、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。手術を受けられない場合でも、辛い症状を緩和する方法はありますので、ご相談に乗らせていだだきたく存じます。
長くなりましたが、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

鼻・副鼻腔クリニック大宮
院長 金谷毅夫